秘密の地図を描こう

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 その報道を見た瞬間、誰もが顔をしかめる。
「まさか、こういう手段に出るとはな」
 バルトフェルドがため息とともに口にした。
「確かに、一番確実な方法だろうが……」
「でも、カガリさんが納得しているのかどうか、わかりません」
 あるいは、民衆の命を盾にされているのかもしれない。マリューのその推測は正しいのではないか。
「この婚姻、邪魔させていただいた方がいいかもしれませんわね」
 ラクスは表情をこわばらせながらそう言った。
「でも、その前にミネルバに出航してもらわないと」
 彼らまで巻き込まれてしまえば厄介なことになる。マリューもそう口にした。
「それに関しては、俺が何とかしておこう」
 かまわないな? とバルトフェルドが視線を向けてくる。
「お任せします」
 ラクスはそう言ってうなずく。
「それと……フリーダムを動かせるようにしておいた方がいいでしょうね」
 カガリの居場所はわからない。
 だが、と彼女は続ける。
「結婚式の日には、必ず人前に出てくるはずですもの」
 そのときであれば、彼女を連れ出すこともできるのではないか。
「……フリーダムか……」
 その瞬間、バルトフェルドがいやそうな表情を作る。
「どうかなさいましたか?」
「動かせないわけではないが……あいつのような動きはさせられないからな。追いかけてきた連中をどうするか、と思っただけだ」
 撃ち落とすのはまずいだろうし、と彼は言う。
「確かに」
 そんなことをすれば、カガリがどのような反応を見せるか。考えなくてもわかる。
「あいつならパイロットを殺さずに撃ち落とせるのかもしれないがな」
 自分にはそこまで実力がないからな、と苦笑とともに彼は続けた。
「そんなことはないと思いますけど?」
 マリューがそう言うのは、彼に好意を抱いているからだろうか。
「まぁ、普通よりは上のレベルだと自負しているがね」
 だが、とバルトフェルドは続ける。
「あいつはそんなレベルじゃないからな」
 だからこそ、戦いの中で目立つ。
 そして、皆から頼りにされる。
 しかし、キラがすがれる人間がどれだけいただろうか。
「まぁ、今言っても仕方がないことだな、それは」
 それよりもカガリの方だな、と彼は話題を元に戻そうとした。
「とりあえず、フリーダムの速度なら何とかなると思うが……被弾覚悟だな」
 彼は言葉とともに髪をかき上げる。
「なら、俺が乗るか?」
 その瞬間だ。いきなり背後からこれが響いてくる。
「驚かせないでくださいませ、カナード様」
 ため息とともにラクスは彼へと視線を向けた。その周囲では二人がまだ警戒を解けないでいる。逆に言えば、彼の気配に気づけなかったことがそれだけ衝撃的だったと言うことだろうか。
「マルキオから頼まれたからな。今しばらくは協力してやるが?」
 それを無視して、彼は言葉を重ねた。
「あいつほどではないが、まぁ、殺さない程度のことはできると思うぞ」
 そう言って彼は笑う。
 確かに、彼ならばできる。それをラクスはよく知っている。。
「わかりました。お願いいたします」
 だから、ためらうことなくそう言った。
「……そうだな。そいつの実力はキラにも引けをとらない。むしろ、殺すことに迷いがないだけ強いかもしれないな」
 どちらがいいとはいえないが、とバルトフェルドは口にする。
「それでも、キラ君の負担が減ることは事実ですわ」
 カガリの存在が大西洋連合に取り込まれていなければ、彼は自由に動けるはずだから、とマリューもうなずく。
「なら、決まりだな」
 後は結婚式の日取りか、と彼は呟くように言った。
「それもすぐわかるだろう」
 セイランからすれば、結婚式を盛大に執り行って内外に知らしめたいと思っているはず。だから、事前に日程を発表するだろう。
 そのときに詳しい作戦を考えればいい。バルトフェルドの言葉に、誰もがうなずいて見せた。

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最遊釈厄伝